2015年の相続税法改正以来、相続税は「金持ちだけの問題」ではなくなりました。ある程度まとまった資産がある人は早めに対策しないと相続税課税で家族に負担がかかります。
今回は、相続税の制約のためにやっておきたい生前対策を4つご紹介しましょう。
目次
相続税対策は時間をかけて準備をすることが大事
誰もが相続税を意識する時代となりましたが、日本は元来「死を忌み嫌う」風潮が強いため、生きている間から相続税対策をするのを避けがちです。
「今は元気だから気にしなくていい」と強がっても、死は計画通りには来てくれません。病気や事故である日突然人生が終わることだってあるのです。このとき無策でいれば、思わぬ高い相続税課税で遺された家族が苦しむかもしれません。
そして、相続税対策は一朝一夕にはできません。非課税の仕組を活用したり、節税になる資産を探したりするのには時間がかかります。
本気で相続税を心配するなら、死という現実を恐れず、今から少しずつ対策を講じていくべきでしょう。
やっておきたい相続税の生前対策4つ
では、どのような対策が後々の相続税の節約になるのでしょうか。ここでは4つの対策をご紹介します。
対策1:投資用不動産の購入
まとまった現預金をお持ちの方は投資用不動産を購入するとよいでしょう。土地と建物を購入し、これらを不動産投資に活用することで節税になります。なぜでしょうか。相続税の課税の仕組みに理由があります。
相続税の多寡は財産評価額によって決まります。相続税法では財産ごとに評価方法が異なっており、現預金はそのままの金額が評価額ですが、賃貸用不動産については、以下の要素を用いて評価するとされています。
【土地】
- 路線価方式あるいは倍率方式
- 借地権割合
- 借家権割合
- 賃貸している部屋の床面積の割合
【建物】
- 固定資産税評価額
- 借家権割合
- 賃貸している部屋の床面積の割合
これらの要素を用いると、現預金ならば1億円になる評価額が、土地建物になると半額以下になることもあります。小規模宅地等の特例などが適用されればさらに評価額は下がり、結果、節税になるのです。
対策2:生前贈与で節税
「不動産の購入にイマイチ踏み切れない」「そこまでまとまった資金はない」という方は、贈与税の非課税枠を上手に活用するとよいでしょう。
一般的な贈与税の課税方式である暦年課税方式では、年間110万円までが非課税となっています。この非課税枠を上手に活用して少しずつ子や孫に現預金を移していくのも一つの方法です。
ただ、毎年定期的に贈与をしていると「まとまった金額が分割して毎年贈与されているだけ」だとみなされ、まとまった金額に贈与税が課税されることがあります。
110万円を10年間毎年贈与している場合、贈与税の課税対象額は110万円ではなく1100万円(=110万円×10年間)だとみなされてしまうのです。
慎重になるなら、贈与契約書をその都度作成するなど対策を講じたほうがよいでしょう。
対策3:生命保険への加入
生命保険に加入し、自身の死亡保険金を子や孫への財産として遺すのも相続税対策になります。なぜかというと、生命保険には「500万円×法定相続人の数」という非課税枠があるからです。
この非課税枠と相続税の基礎控除額を意識した上で生命保険契約を行えば、「遺族に財産は残るけれど相続税はかからない」という状態を作り出すことができます。
対策4:贈与税の非課税制度の活用
現在、高齢世代から現役世代への資産移転を促すべく、結婚や子育て、教育、住宅などの分野で贈与が行われた場合、それぞれ次の金額を上限に贈与税が非課税となります。
- 結婚・子育て資金の贈与税の非課税枠:1000万円
- 教育資金の贈与税の非課税枠:1500万円
- 住宅取得等資金の贈与税の非課税枠:最大3000万円(※)
- ※購入する住宅の種類や購入時期によって非課税枠が異なります
贈与を通じて子や孫の人生を応援することが、将来の相続税への対策を講じることにもつながるわけです。
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相続税・贈与税の総額試算コーナー
税理士法人チェスター
三井住友信託銀行
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まとめ
今回お伝えした節税策はほんの一部です。ただ、いずれも時間をかけて行うことが必要となります。「やっぱりちょっと気が引ける、でもやってみたい」と感じたら、敷居を低く感じる節税策を少額からトライしてみてもよいかもしれませんね。